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ファンド保有銘柄の投資効率は――還元と投資、バランス重要

無理な増配実施の企業も
 株式市場で投資ファンドが保有する銘柄に注目が集まっている。大量保有報告書の提出で大株主として突如浮上した後、株価が上昇するケースが目立つためだ。ただ、中長期にみると市場平均に比べ下落する銘柄も半数を上回る。代表的な投資ファンド保有銘柄を分析し、投資収益率の良しあしの分かれ目がどこにあるかを探った。
 昨年来、経営陣による企業買収(MBO)や敵対的なTOB(株式公開買い付け)が相次ぐなか、「株主価値の向上」を掲げて行動する投資ファンドの存在感が高まっている。五%超の上場株式を持つ株主に報告が義務付けられる大量保有報告書を見ても、ファンドによる提出が目立つ。この結果、金融庁の電子開示システム「EDINET(エディネット)」によると、大量保有報告書の提出件数は今年度(三月二十二日時点)には一万九千件を超え、三年前に比べ倍増した。
 同報告書を提出した回数の多い投資ファンドはスティール・パートナーズ、ダルトン・ストラテジック・パートナーシップ、ダルトン・インベストメンツの三つ。これらの保有する銘柄について日本経済新聞デジタルメディアの総合経済データバンク「NEEDS」を用いて、ファンドが保有した後の株価や業績の変動を分析した。
 対象は、三ファンドが二〇〇三年四月から〇七年二月までに大量保有報告書を提出した銘柄のうち、直近一年間の同報告書や大株主情報による開示で保有が確認できる六十四銘柄。各銘柄の報告書が初めて確認された時点を起点に、その三カ月後、および三月十六日時点までの株価投資収益率(配当込み・権利落ち調整済み株価騰落率)をそれぞれ算出した。比較対象の株価指数(ベンチマーク)は、同期間の日経JAPAN一〇〇〇(配当込み)を用いた。
中長期は不透明
 提出後三カ月間の投資収益率が日経J一〇〇〇を上回ったのは、全体の三分の二に当たる四十三銘柄だった。三精輸送機の八〇%上昇(同期間の指数上昇率は一五%)を筆頭に、上昇率は指数に比べ平均で約八ポイント高い。逆に、現在まで期間を延ばすと投資収益率で日経J一〇〇〇を上回るのは半分に満たない三十銘柄だ。
 六十四銘柄の提出時点から現在までの平均保有期間は二年二カ月で、三年以上の保有も十一銘柄あり、中長期で見るとファンドの保有銘柄が市場より高い投資収益率を達成するとはいえない。しかも雑貨屋ブルドッグやアシックスなど十三銘柄は、投資収益率がマイナスだ。
 市場平均を上回る銘柄と下回る銘柄にはどのような違いがあるのか。
 ファンド保有銘柄全体では、上場全社平均と比べて過去の利益の蓄積である利益剰余金が総資産に占める割合が高く、いわゆるキャッシュリッチ企業が多い。だが、投資収益率がマイナスの十三銘柄はその割合が上場全社平均より低く、余剰資金が豊富とはいえない。
 さらにこの十三銘柄の株主資本利益率(ROE)と配当性向の推移を見ると、ファンドによる保有が明らかになって以降、それ以前と比べて一〇ポイント以上配当性向を上げたのは五銘柄。うち四銘柄は減益でROEが低下するなかで増配を実施した。金下建設のように営業キャッシュフローが赤字にもかかわらず増配した企業もある。
 一方、投資収益率が市場平均より高い三十銘柄のうち二十銘柄は、増益を達成するなかでROEも上昇し、うち十四銘柄が増配した。例えば〇四年十一月にスティールの保有が確認された電気興業は、〇六年三月期までで単独ベースの当期利益が倍増するなかで、一株配当は四倍以上増えた。配当性向も九〇%まで高めつつ、ROEは九%台に上昇した。
 配当額を二倍以上にしたのはほかにも八社。ROEも上昇している。収益性向上を維持しながらの積極的な株主還元が株価の上昇につながったようだ。
スティール上位
 保有期間が異なるので単純比較はできないが、投資収益率の大きい順に並べると上位十社はいずれもスティール保有銘柄だった。
 投資収益率が最も高いユシロ化学工業は、スティールが敵対的TOBを発表した〇三年十二月時点では典型的なキャッシュリッチ企業だった。しかし、増配などの株主還元策を株高につなげ買収を免れた。ユシロは来期以後は配当性向一〇〇%の高配当政策を見直す一方、設備投資の増強を打ち出し、これまでの姿勢を転換し始めた。
 また、日阪製作所はスティールによる保有が明らかになった〇四年に初の会社説明会を開き、電気興業は〇五年二月にIR(投資家向け広報)専門部署を独立させるなど、株主を意識した情報公開に取り組んでいる。「ファンドに保有される企業は株主価値を意識した経営を今後の成長にどう生かすかが課題」(外資系アセットマネジメントのファンドマネジャー)との指摘もある。
 中長期の投資対象としてファンド保有銘柄に注目する場合は「無理な株主還元をしていないか」「増配だけでなく設備投資などにも取り組みながら、収益性や成長力を高めているか」を注視する必要がありそうだ。
(日本経済新聞デジタルメディア 塚本千津子)

2007年3月23日 日経産業新聞 26面より